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【訴訟】ジャンルでは、最高裁や東京高裁等の判決をタイムリーに紹介していきます。なお、判決は一部を抜粋し、裁判所の判断を要約していますので、正確な情報が必要な方は、各裁判所のホームページにて実際の判決文を直接ご覧ください。


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【東高裁】2次的著作物の引用は、その著作者の明示が必要
訴訟】発信:2002/06/19(水) 20:47:13  

   米国の作曲家の著作に係る英語版演劇台本を日本語に翻訳し、その二次的著作物である翻訳台本につき著作権を取得した被控訴人(一審原告)が、控訴人(一審被告)らに対し、被控訴人の承諾を得ずかつ翻訳者としての氏名を表示しないまま、控訴人の著作に係る「絶対音感」と題する書籍に採録したとして、複製権侵害に基づく財産的損害の賠償金としての500万円(内金)等の支払を請求したのに対し、控訴人が、上記翻訳部分の採録は著作権法32条1項所定の適法な引用に当たるなどとして、これを争い、原判決が上記侵害を認めて被控訴人の請求を一部認容したことについて控訴人らが不服として控訴を提起した事案において東京高裁は、本件控訴を棄却する旨の判決を下した。ここでは本判決における東京高裁の判断の一部を抜粋して紹介する。


(参考条文) 著作権法第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

       著作権法第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
       一 第三十二条...略...の規定により著作物を複製する場合
       二 ...略

   【東京高裁の判断】

   著作権法32条1項を根拠に、公表された著作物の全部又は一部を著作権者の許諾を得ることなく自己の著作物に含ませて利用するためには、当該利用が、

   @引用に当たること、
   A公正な慣行に合致するものであること、
   B報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること、

   の3要件を満たすことが必要であると解するのが相当である。


   引用に際しては、上記のとおり、引用部分を、括弧でくくるなどして、引用著作物と明瞭に区別することに加え、引用部分が被引用著作物に由来することを明示するため、引用著作物中に、引用部分の出所を明示するという慣行があることは、当裁判所に顕著な事実である。そして、このような慣行が、著作権法32条1項にいう「公正な慣行」という評価に値するものであることは、著作権法の目的に照らして、明らかというべきである。

   ここにいう、”出所を明示した”というためには、少なくとも、出典を記載することが必要であり、特に、被引用著作物が「翻訳の著作物」である場合、これに加えて、著作者名(翻訳者名等)を合わせて表示することが必要な場合が多いということができるであろう(著作権法48条1項、2項参照)。

  前記認定によれば、本件書籍中にはいずれも、被引用著作物が本件翻訳台本であることを示すには足りず、かつ、いずれの個所にも、翻訳者が被控訴人であることは記載されていないから、これらの記述のみでは、出所を明示したということはできないというべきである。

  この点につき、控訴人らは、罰則上、著作権侵害の罪とは別に出所明示義務違反の罪が設けられていることを根拠として、著作権法48条1項の出所明示義務は、同法32条1項により適法な引用と認められる場合に課される法律上の義務ではあるものの、この義務に反し出所明示を怠った場合であっても、著作権侵害が成立するわけではない、と主張する。

  しかしながら、控訴人らの上記主張は、出所を明示しない引用が適法な引用と認められる場合には当てはまっても、出所を明示することが公正な慣行と認められるに至っている場合には、当てはまらないというべきである。出所を明示しないで引用することは、それ自体では、著作権(複製権)侵害を構成するものではない。この限りでは、控訴人らの主張は正当である。しかし、そのことは、出所を明示することが公正な慣行と認められるに至ったとき、公正な慣行に反する、という媒介項を通じて、著作権(複製権)侵害を構成することを否定すべき根拠になるものではない。

  出所を明示しないという同じ行為であっても、単に法がそれを義務付けているにすぎない段階と、社会において、現に公正な慣行と認められるに至っている段階とで、法的評価を異にすることになっても、何ら差し支えないはずである。そして、出所を明示する慣行が現に存在するに至っているとき、出所明示を励行させようとして設けられた著作権法48条1項の存在のゆえに、これを公正な慣行とすることが妨げられるとすれば、それは一種の背理というべきである。


   ◆H14. 4.11 東京高裁 平成13(ネ)3677等 著作権 民事訴訟事件
   【関連URL】裁判所HP



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