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【東地裁】代理人過失「責めに帰することができない理由」ならず
訴訟】発信:2002/07/02(火) 22:48:32  

  特許庁長官による特許料納付書の却下処分を不服として原告が当該却下処分の無効の確認を求めていた事件で、東京地裁は6月27日、原告の請求を棄却する判決を下した。ここではその判決を一部を抜粋して紹介する。

  【判決の前提となる事実】

   原告の本件特許権は「平成6年改正法」の施行日(平成8年1月1日)前に公告決定を受け、平成8年3月27日に特許出願公告(特公平8−29111)がされた。公告決定が平成8年1月1日より前であったため、平成6年改正法附則の経過措置規定により新法の適用がなく、特許料納付期限は公告日から起算された。平成8年6月5日に、いわゆる付与前異議の制度のもとで特許異議の申立てがされ、これが棄却されて特許査定を受けたのは平成10年4月21日であり、同10年5月29日に、原告を特許権者として、設定の登録がされた。特許査定の時点において、存続期間3年の期間が満了する日(すなわち第04年分の特許料の納付期限)である平成11年3月27日まで1年もなかった。

   本件特許権については、平成11年9月27日までに第04年分の特許料が納付されなかったことを理由として、同11年12月1日、抹消登録がされた。

   原告は、本件特許権に係る第04年分〜第07年分の特許料につき平成11年11月9日に特許料納付書を被告(特許庁長官)に提出したが、被告は却下理由通知を原告代理人Aあてに送付した。その後、原告は、上申書を3通、弁明書を3通提出したが、同12年4月19日、被告は、同却下理由通知書に記載した理由が解消されていないとして、本件納付書について手続却下の処分をした。

   この却下処分に対して原告は行政不服審査法による異議申立てをしたが、異議申立人(原告)の主張はいずれも採用することができないとして異議申立てを棄却する旨の決定がくだされた。本事件は、上記特許料納付書の却下処分に対して、原告が却下処分の無効の確認を請求した事件である。

  【事件の争点】

   法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」の文言の解釈が、法121条の同文言より広く解釈されるべきか否か。
 法改正に伴う経過措置の取り扱いに関して、代理人弁理士の過失を「その責めに帰することができない理由」となるか。また、代理人弁理士の過失を、出願人・特許権者である原告の「その責めに帰することができない理由」として主張できるか。

  【東京地裁の判断】

   ■法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」の解釈

   法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」とは、これが本来の特許料の納付期間の経過後、さらに6か月間の追納期間が経過した後(法112条1項参照)の特許料納付という例外的な取扱いを許容するための要件であり、その文言の国語上の通常の意味に照らしても、これと同一の文言である法121条2項の「その責めに帰することができない理由」と同様、天災地変等のように、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払ってなお追納期間内に納付できなかった場合のことを意味するものと解するのが相当である。

   パリ条約5条の2第2項の規定に照らしても、特許権の回復についてどのような要件の下でこれを容認するかは各締結国の判断にゆだねられているものであって、米国特許法や欧州特許条約の規定とわが国の法の規定とを同一に解釈しなければならないというものではない。

   法112条の3は第三者に法定実施権を認めたものではないから、原告主張のように法112条の2を第三者に中用権を認めた規定ということはできない。また、法121条の場合について法112条の3のような第三者保護規定が設けられていないことを理由に法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」を法121条2項の「その責めに帰することができない理由」よりも広く解すべきものということもできない。

   ■代理人の過失を「その責めに帰することができない理由」として主張できるか

   特許料の納付を行う代理人弁理士は、その職務として平成6年改正法の内容について承知しているはずであるから、本件特許権の特許料の納付を行う原告の代理人弁理士としては、個々の特許権について、平成6年改正法が適用されるのかどうかについて考慮したうえで、特許料の納付につき万全の管理をする注意義務があるというべきであるところ、本件においては、原告主張のような事情が存在したことを考慮しても、代理人弁理士において、通常の注意力を有する者が万全の注意を払ってもなお追納期限内に納付できなかった事情が存在するとは到底いうことができない。

   原告の代理人弁理士としては、平成10年5月の設定登録時に第4年分の特許料の納付期限を確認することも容易にできたはずであるのに漫然納付期間を徒過し、さらに6か月間の追納期間をも徒過したものであって、その過失は明らかといわざるを得ない。

   代理人は本人(出願人・特許権者)により選任され、本人の委託を受けて本人の名をもって特許料等の納付行為を行うのであるから、このような代理人が過失により追納期限を徒過した場合に本人がその責めを負うのは当然であって、たとえ本人に過失がなかったとしても法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」がある場合には該当しない。


   ◆H14. 6.27 東京地裁 平成13(行ウ)285 特許権 行政訴訟事件
   東京地方裁判所民事第46部
   【関連URL】裁判所HP



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