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【東高裁】適宜選択可能な設計事項 −進歩性判断−
訴訟】発信:2002/08/21(水) 09:52:07  

   原告は、名称を「コアレスペーパーロールの製法とこれに用いる装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願をし、出願公告されたが、平成9年12月24日拒絶査定を受けたので、これに対する不服の審判を請求し、手続補正書により、本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲等の補正をした。特許庁は、同請求を審理した上、本件補正を却下するとともに「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「前審決」という。)をしたが、審決取消請求事件において、平成13年1月15日言渡しの判決(以下「前判決」という。)により前審決が取り消されたので、更に審理をした結果、同年3月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は原告に送達された。
   本事件は、原告が本件審決の取消を求めた審決取消請求事件であるがが、東京高裁は8月9日、原告の請求を棄却する判決を下した。ここでは本判決の一部を抜粋して紹介する。


   【東京高裁の判断】

   ■進歩性について

   審決は、本願発明1及び2の構成は、引用例2に記載されいるか、又は引用例2に記載された技術事項から当業者が容易に想到できた事項であり、引用例発明1に引用例2の上記構成を採用したことに格別の困難があったとは認められないから、本願発明1及び2は、引用例発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと判断した。

   これに対し、原告は、引用例発明1は、つかみ部材を巻取りパートと巻取軸抜き取りパートの2点間で往復運動させる基本構成を発明の不可欠の要素としており、他方、引用例2には、「この巻軸を加熱しておくことにより」(6欄3行目)との記載があるにすぎないから、引用例発明1に引用例2の巻軸を加熱するとの技術事項を適用するならば、巻取りパートにおいて加熱するか、又は巻取軸抜き取りパートにおいて加熱するかのいずれかしか想定し得ないと主張するので、検討するに、引用例1(甲第23号証)には、以下の記載がある。

  ・・・引用例1省略・・・

   以上の記載によれば、従来の無芯紙ロール製造装置においては、巻軸の押抜位置から巻取位置への搬送を無端状コンベアを利用して行うため、構造が複雑かつ大型になるとの問題点があったことにかんがみ、引用例発明1の巻軸移送部Dは、巻軸の押抜位置からぺーパ巻取装置への移動を、支軸を中心に揺動自在に設けられたシリンダと、このシリンダ内を出入れするピストンロッド端に取り付けられたつかみ部材と、上記シリンダを揺動させるもう一つのシリンダとから成る巻軸移送部材により行うものであり、この構成により、ぺーパの巻取り、切断、押し抜き及び巻軸の移し替えが、連続的に、しかも、繰り返し実施されるという効果、各部材の設置空間を抑制することができるため、無芯紙ロールの製造装置全体を小形化することができるという効果、ぺーパ送りなどの動作、工程の単純化を図っているため、ロール体や巻軸の移送や処理の速度を早めることができるという効果等が得られるものと認められる。

   引用例2(甲第10号証)には、「巻軸1を加熱しておくと、噴霧した接着剤液が少々早く乾燥されてトイレットペーパー同志の仮着が早くなるから、径を小さくして巻軸1をトイレットペーパーロール7より引抜き際にトイレットペーパーロール7の巻き初め部に成形されたトイレットペーパーの仮着筒芯6によりトイレットペーパーロールの形状をより良く保つことができる」と記載されており、この作用効果を奏するために、巻軸を加熱しておくとの上記技術事項を引用例1に適用することは、当業者にとって、容易に推考し得るものというべきである。

   そして、引用例発明1に対して、巻軸を加熱しておくとの引用例2記載の技術事項を適用する場合、加熱する場所としては、一連の工程の連続的かつ繰り返しの実施、各部材の設置空間の抑制、装置全体の小形化、ぺーパ送り動作、工程の単純化、巻軸の移送速度を早める等、引用例発明1の作用効果を阻害しない場所を選択する必要がある。

   また、加熱する場所への移送に巻軸移送部材を兼務させることができ、かつ、余計な移送が追加されないように、巻取り箇所、巻軸抜き取り箇所及び巻軸の巻取箇所へという一連の工程の中から、巻軸が静止する場所を採用することが相当であるが、そのような場所としては、巻取り箇所、巻軸抜き取り箇所、巻軸が上昇した巻軸抜き取り箇所の上方の箇所、又は前記箇所から巻軸が揺動されて移動した巻き取り箇所の上方という4箇所が挙げられる。

   一方、本願発明は、加熱する場所として、巻取手段の上方を採用しているが、本件明細書の発明の詳細な説明の欄において、加熱する場所の特定により奏される効果として記載されているものは、ペーパーの巻取り、巻取軸の抜去、抜去巻取軸を加熱部へ供給し加熱する作業、巻取軸の加熱部から巻取り部への供給という一連の工程が、環状サイクルをもって遂行し得ること、また、巻取軸抜き取り部、巻取軸加熱部、巻取り部間を巻取軸吊送用のグリッパーにより連絡するだけの簡素な構成により所期の目的を有効に達成し得ることに限られており、このような効果は、加熱する場所が一連の工程から成る環状サイクル中にあれば奏することができる。

  そうすると、これら本件明細書の記載を総合するならば、加熱場所を上記4箇所から選択することは、当業者にとって、加熱から巻取開始までの時間、加熱装置の設置の容易性等に応じ適宜選択可能な設計事項というべきである。したがって、原告の主張は失当であり、審決の相違点の判断に誤りはない。

   ◆H14. 8. 9 東京高裁 平成13(行ケ)171 特許権 行政訴訟事件
   東京高等裁判所第13民事部
   裁判長裁判官   篠   原   勝   美
   裁判官   岡   本       岳
   裁判官   長   沢   幸   男



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