


【訴訟】ジャンルでは、最高裁や東京高裁等の判決をタイムリーに紹介していきます。なお、判決は一部を抜粋し、裁判所の判断を要約していますので、正確な情報が必要な方は、各裁判所のホームページにて実際の判決文を直接ご覧ください。
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【東高裁】レコード会社が歌唱の著作権を直接取得する余地なし
【訴訟】発信:2002/10/23(水) 09:42:57
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本件は、レコードの制作、販売等を業とする会社である被控訴人ら(コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社等)が、レコードの企画、制作、販売等を業とする会社である控訴人エー・アール・シー株式会社及び控訴人株式会社エフアイシーに対して、同控訴人らがそれぞれチェコ共和国において製造させた上で、日本国内において頒布する目的で輸入し各コンパクトディスク及びカセットテープついて、被控訴人らは、そこに収録されている各実演楽曲につき著作権法89条1項に基づく実演家の著作隣接権を有していると主張し、同控訴人らは輸入の時において国内において作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成された物であると知りながら、日本国内において頒布したとして、本件輸入レコードの輸入又は頒布の差止め及び廃棄を請求し、また、被控訴人らが著作隣接権を有する実演を収録したレコードの輸入を許諾する場合の通常の許諾料は、実演楽曲1曲、レコード1枚につき20円であるとして、著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を損害額とする不法行為に基づく損害賠償の各請求等を行った事案。
原判決は、被控訴人らの本件実演の著作隣接権の取得原因事実を認め、本件レコードが発行された際には、本件実演家の氏名が、歌唱を行った者として記載されていたものと認められるから、本件レコードは、本件実演家が本件実演の著作者であることを明示して発行されたものというべきであるとして、控訴人らの上記各主張を排斥した。
本件において東京高裁は10月17日、原判決を支持し本件控訴をいずれも棄却する判決を下した。ここでは本判決における東京高裁の判断についてその一部を紹介する。
【東京高裁の判断】
1 争点@【旧法上の実演家の歌唱の著作権と旧法22条の7との関係】
立法経緯及び立法形式によれば、旧法下で「演奏歌唱」が旧法1条1項の著作物に加えられた契機としては、蓄音機音盤(複写盤)の模造防止のためであると認められるものであるが、その前提として、楽曲を演奏・歌唱する行為について、その芸術的価値を認め、その精神的努力をする演奏者・歌唱者を、作詞家、作曲家と同様に第一次的著作者として著作権を享有させて、旧法1条1項において保護することとしたことが明らかである。
旧法において、音楽の著作物(作詞、作曲、演奏・歌唱)について、第一次的著作者(作詞家、作曲家、演奏・歌唱者)から許諾を得る等して、適法に写調されたレコードに関しては、第一次的著作者(作詞家、作曲家、演奏・歌唱者)が自らの著作物(作詞、作曲、演奏・歌唱)について専有する複製権(旧法1条)と、レコード製作者が当該レコード(録音物)についてのみ有する著作権(旧法22条の7)とが、それぞれ別個の権利として併存するものであることは、明らかであり、現行法におけるのと同様に、当該レコードをこれらの権利者の許諾を得ることなく複製(増製)することは、それぞれの権利の侵害に当たることになる。
これに反し、控訴人エー・アール・シーらが主張する「レコード製作者が演奏・歌唱を適法に写調してレコードの著作権(旧法22条の7)を取得した場合には、レコードに固定された音、すなわち演奏・歌唱についての演奏・歌唱の著作権がレコード製作者の著作権に含まれ、レコード製作者のみがこれを保有する、あるいは、演奏・歌唱の実演家の権利は、最初の契約の際に行使されるとその使命を全うし、レコード製作者との契約を通じてのみ守られるのが本則であり、その権利を否定される」旨の主位的及び予備的主張を採る余地がないことは、以上の判示内容に照らして、自明であるというべきである。
2 争点A【レコード会社による法人著作の成否及び著作名義】
判示の契約関係を総合して考察すれば、本件実演家とレコード会社との間の本件各契約において、実演家がレコード会社に対して、その指揮監督に服し、一定の労働力を提供して労務に就くことを受容することは、契約の目的とされておらず、本件実演家がレコード会社を使用者とする雇用関係ないしこれに類する関係にあったものとは到底認めることはできない。また、本件実演家がその実演に当たりレコード会社の指揮監督に服したり、レコード会社の支配・従属関係にあったと認めることができないことも明らかである。
したがって、本件実演家は、レコード会社の従業者に該当しないことは自明であり、この点で法人(団体)著作の要件を充たさないから、レコード会社は、本件実演(歌唱)の著作物について、その著作者として歌唱の著作権を直接取得し得ないことは明らかというべきである。
本件各契約において、本件実演家が歌唱の著作権をレコード会社に譲渡することをあらかじめ合意して、この登録に協力することを約定していたこと(契約事項d)は、端的に、契約当事者の間においてもこのことを前提として合意していたものと認めることができる。
のみならず、上記(1)のア及びウに判示した事実関係によれば、本件レコードの発行に当たり、著作物である本件実演(歌唱)の著作者として、本件実演家の氏名(芸名)がレコード盤のレーベル部分に明記されており、レコード会社は、本件実演についての著作者としては表記されていないことが認められる。
このように、本件実演については、法人(団体)著作の要件のうち、法人(団体)が自己の著作の名義の下に公表したことを充たすものとすることはできないから、この点においても、レコード会社が本件実演(歌唱)の著作物について、その著作者であるとして歌唱の著作権を直接取得する余地はない。
したがってまた、本件実演は、前記の旧法6条所定の「団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物」にも該当しないことは、明らかである。
◆H14.10.17 東京高裁 平成11(ネ)3239 著作権 民事訴訟事件 東京高等裁判所第18民事部 裁判長裁判官 永 井 紀 昭 裁判官 古 城 春 実 裁判官 橋 本 英 史
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